行き帰りの電車はかなり疲労します。
そういう方、多いと思います。
今日も行きの電車、いきなり眼鏡にグシャグシャの白髪頭のオジサンが隣にドーンと座ってきて頭をバリバリかきながら読書を始めたのです。そして、その本を
持つ手のヒジがぐりぐりボクのチカラコブにあたるのです。
やだなー。カンベンしてくれよー。カンジワルイナー。ボクは隙間をあけようと大ゲサに座り直すのですが、オジサンまったく気にせず、気付かず。
「ガマンしよー。そのうち降りるに違いない。降りておくれ。禅だ。深呼吸だ。目の前には広い草原が広がっているんだ」
だめだ。顔がポッポしてきた。腎臓に悪い。肝臓に悪い。だめだ。脳ミソのまん中にオレンジ色に燃え盛る“新グロモントのブルース・リー”が仁王立ちだ。
ついぞオジサンは降りず新富町に到着。
ホームに降り立つと頭はクラクラ、くたびれてまっすぐ歩けない。
あー、何やってんだ。ボクは。これだから死にたくなるんだよなー。もう。
この日の帰りの電車、駆け込み座ってほっとす
ると、隣のおネエさんが突然、
「ここ、どこ駅ですか?」
「えッ? 和光市です」
「ありがとうございます」
乗り換える予定だったのだろうか、その人はキョロキョロしながら落ちつかない様子。
そして次の駅に着くと席を立ちドアにむかう途中こちらを振り向き、改めて深々と頭を下げ「ありがとうございました」と一礼して降りて行きました。
そんな‥‥駅名を答えたくらいであんなに丁寧に‥‥。びっくりしたのと感心し過ぎたのとで、涙が出そうになりました。
こういう人もいるのかー。
世の中は捨てたもんじゃないなー。
生きてて良かったなー。
西陽の中を怒ったり泣いたりする男を乗せて、電車はガタゴトあわただしく走り続けるのでした。
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